ヤヌス神と麻薬性鎮痛薬
ヤヌス神をご存じだろうか。古代ローマの門の神であり、表と裏の異なる二つの顔をもっている双面神のことである。ヨーロッパの旧市街を取り巻いている城壁の入り口に、ときにヤヌス神が飾られていることがある。1年の入り口にあたる1月の英語表現は、ヤヌス神から派生した、「January」が当てはめられている。そこから転じて、強力な鎮痛作用と強い副作用の二面性を併せ持っている麻薬性鎮痛薬をヤヌスドラッグと総称している。麻薬性鎮痛薬は強力な鎮痛作用があるが、一方では長期間の内服使用で性ホルモン減少、食欲減退、注意力障害などの無視できない副作用を引き起こしてくる。米国麻酔学会ではかなり前から麻薬性鎮痛薬をヤヌスドラッグとして警告してきており、図のようなポスターを配布してきた。日本式に表現すると、諸刃の刃である。