院長ブログ

痛みの専門外来であるペインクリニックでは、薬の他に注射がよく併用されています。勿論痛みの治療では、当然ですができるだけ痛くない注射を目指しています。痛くない注射には幾つかの条件があります。まず細い針は絶対条件になります。しかし細すぎると刺入の際に不安定になり、場合によっては体内で折れる可能性もあります。このため当院では27Gか30Gの針を使用しています。ちなみに「膝の注射は痛い!」という先入観があるかもしれませんが、当院では膝関節のヒアルロン酸も27G針を使用しており、かなり刺入時痛は少ない(はずです?)。また針先にはBEVELとよばれる斜めに切れている部分があります。この向きを皮膚の割線方向に一致させて、刺すというよりは針を沈める感覚で注射をおこなっています。もちろん針は一回一回すべて使い捨てにしております。針を抜く時も痛みが生じるため、かるく回転させながら抜去しています。
 以前屋根瓦職人のプロは、粘土から瓦を切り出すときにまっすぐ切らずに軽い振動を加えながら切り出していくという話を聞いたことがあります。私も深い位置に針を刺すときには、目には見えませんが微細な振動を加えながら針を刺入しています。針先に引っかかりがなくスムースに刺入できます。同じアイデアで超音波振動ナイフがすでに料理用に市販されています。ケーキやパンなど力をいれずに引っかかりなく綺麗に切れます。また薬液の温度も影響があり、暖めると比較的刺入痛が少ないと言われており、すこし手のひらでアンプルを人肌に温めて注射することもあります。
 体に注射しても痛くない部位はあるでしょうか。実は痛覚盲点が腕にあるといわれており、針を刺入しても痛くないといわれております。場所は肩の先端の肩峰というでっぱりと、肘の後ろの肘頭とよばれる骨のでっぱりを結んだ線と、三角筋の下縁の交点から6mm下のすり鉢状にへこんだ点が痛覚盲点といわれております。子供のワクチン注射の際に利用している専門医もおります。


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