院長ブログ

 皆さん、5月の連休が近づいてきましたが、いかがお過ごしでしょうか。今年はコロナ騒動で世の中が大変なことになっております。こんな時期なので、5月に関連した気楽な話題を提供しましょう。5月1日は日本ではメーデーで知られていますが、祝日ではありません。ヨーロッパでは多くの国で祝日になっており、商店街はほとんど休みになってしまいます。また近距離のローカル鉄道などの公共交通機関の多くが休止になります。5月の連休期間に海外旅行にでかけると、5月1日をどう過ごすかがいつも悩みの種です。
 以前美食で有名なバスク地方を5月の連休に尋ねた際に、スペインとフランスの国境沿いまで足を伸ばしたときの話です。スペインからの鉄道は国境の町エンダイエ駅で一旦途切れてしまい、フランス側の鉄道が始まります。国境は特に境界線もなく、そのままフランス領になります。次のパリ行きの電車がくるまでまだ時間があったので、駅前の小さなカフェにはいり、コーヒーと朝の軽食を食べて一休みしていました。突然店主が店からでていきどっかにいってしまいました。程なく戻ってきましたが、手に小さなスズランの花束を二つもっていました。一つは店内にいた一人旅の女性客に渡し、もう一つを家内に差し出しました。家内は何が起きたのかよくわからずちょっとびっくりしましたが、大喜びで花束を受け取りました。たった1輪の小さなスズランでも、贈ってもらうとすごく幸せな気分になります。片田舎のいかつい店主が、フランス人特有の粋な気持ちをもっているのには驚かされました。少しチップをはずんでテーブルに置いてきたのは言うまでもありません。そのまま電車で30分ほどでバイヨンヌ駅まで移動しました。駅前にはすでにメーデーの隊列が大騒ぎしながら行進していました。そして駅前のいたるところで、スズランが売られていました。花束に書かれていたフランス語は、Je porte Bonheur、幸せを開く扉、という意味だそうです。
 あとでスズランとメーデーで検索して、ことの次第がわかりました。フランスでは、この日、一輪の「幸福をもたらす花」と言われている「スズランの花」を大切な人に贈る習慣があるそうです。またフランスでは、5月1日に限って森で摘んだ野生のスズランの花を自由に販売することが認められ、子供達も小遣い稼ぎにスズランのお店を出していることがよくあるそうです。コロナに見舞われた今年のメーデーも、こんな時だからこそフランスでは幸福をもたらすスズランの花束がきっと街角で売られていることでしょう。


フランス側からみると線路が切れている

店主からもらったスズランの花束

メーデーのパレード


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